水曜日, 11月 6

クロマグロとシイラの鉛直遊泳行動を比較した論文:Fisheries Research

クロマグロの産卵期は3-5月。沖縄周辺で産み出された卵や仔魚は、黒潮によって日本列島に運ばれます。幼魚は生まれて最初の冬を東シナ海で越します。翌春、水温の上昇に伴い、1歳になった幼魚はやがて東シナ海を離れ、日本海を北上あるいは日本列島の南岸を黒潮と伴に東進します。

クロマグロは幼魚といえども生態系の頂点あたりに君臨する捕食者です。捕食者はクロマグロだけでなく、他の魚たちもいます。5月に水温が上昇すると東シナ海には南から亜熱帯性の捕食者が北上回遊してきます。その代表がシイラ。5月中旬から6月にかけて、クロマグロとシイラの生息可能水温が東シナ海北部で重複します。彼らの海の中のハビタットも重複しているのでしょうか?
本研究では、シイラとクロマグロに同時にデータロガーを取り付けて、彼らの鉛直方向のハビタットがどのような構成になっているかを調べました。
http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0165783613002142

論文は、Fisheries Researchという雑誌に掲載されます。

シイラはごく表層だけを遊泳していました。ほとんど潜らず、経験水温が20℃を下回ることはまれでした。一方、クロマグロは海表面にも出現しますが、水深30-50mを中心に分布して、時折150m辺りまで潜っていました(東シナ海は大陸棚なので、海底付近まで潜行していたことになります)。深さ方向の水温を観察してみると、30-60mあたりに水温躍層が形成されてはじめており、クロマグロはその直上を遊泳し、時折、躍層下に潜っていました。シイラは水温躍層内部あるいは下部に潜行することはほとんどありませんでした。
5月下旬の対馬海峡あたりでは、海表面あたりにはシイラがもっぱら生息しており、クロマグロはそれより少し深めの水深を泳いでいることがわかりました。対馬海峡では、クロマグロを狙った浮延縄漁業が盛んですが、漁業者たちは「シイラがやってくるとクロマグロが捕れなくなる」と言います。これは両種の水温選好性の違いによる、鉛直方向のハビタットの違いによるものだといえます。



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